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フランチャイズ制の盛と衰

 駆け出しの新聞記者だったころ、フランチャイズ(FC)という言葉はまだ一般的ではなかった。長野市の支局で記者としての仕事をはじめて3か月後、小1の男児が殺されて袋詰めにされ、ダム湖に浮いた。男児の家は長野では著名な一族で、県民の関心は高かった。警察の幹部は、のちに「信州では10年に一度の大事件」と呼んだ。

 当然、マスメディアは特ダネ競争に走った。遺体発見から何日後だったか、ぼくはある情報を手に入れ、先輩の情報とつきあわせて「重要参考人に電器商A(30)」というスクープを放った。地方版ではなく全国版の社会面に見出しが躍った。

 その電機商Aは、県内でFCチェーン店を展開する一族の店長だったから、街は蜂の巣を突いたような騒ぎになった。Aの兄はぼくたちを名誉毀損で提訴すると息巻き、「2億円使ってでも、この事件をつぶす」と宣言した。

 Aは、ヘリを飛ばして空中から新築中の物件を探し、その施主に営業をかけて電機機器をまとめ売りするようなやり手だった。ぼくたちのスクープ後もAは警察に泳がされていて、あるとき運転違反で免許を停止された。その話を聞き込んだぼくは、運転免許センターへ行き、Aに声をかけ、「車で店まで送るから単独インタヴューさせてくれ」と言った。助手席でAは饒舌にしゃべった。

 数日後、Aは殺人死体遺棄容疑で逮捕され、ぼくのインタヴュー記事は華々しく日の目をみた。名誉毀損で訴えられなくてほっとしながら、AのやっていたFC制に感心されられた記憶がある。彼の築いたFCチェーンも事件のせいでつぶれたようだが。

 それから37年が経った。いまFCの危機が話題になっているのは、日本マクドナルドだ。2014年夏に、期限切れの鶏肉をナゲットに使っていたことがきっかけとなり、業績は坂を転がり落ちるように悪化しているそうだ。特に、全店舗の7割ほどを占めるFC店の売り上げが激減しているという。月商3000万円の店が1年間で1300万円まで落ちたというからすごい。FCのオーナーの9割は元社員だそうだが、閉店に追い込まれる店が続出するとみられている。

 元凶は期限切れ鶏肉などではなく、バカ社長だった。FC店の売却益を本社の利益に計上して見せかけ上の増益を作っていたという。社長は交代したが、異物混入が後を絶たず、FC各店は悲鳴をあげている。

 もうひとつ、意外なシーンでFCという言葉を知った。中東やヨーロッパ、アジア、アフリカの一部で荒れ狂うイスラム過激派のテロにからむ話だ。

 パリの風刺週刊紙『シャルリー・エブド』などを2015年1月に襲ったテロリスト、アルジェリア系フランス人兄弟は、アル・カーイダとつながっていたとされる。あるイギリス人記者は、週刊新潮の座談会でこんなことを言っていた。

 「今回の事件でエポックメイキングだといえるのは、組織立ったテロではないということだ。関係があったとされるアル・カーイダ系幹部は“標的は本人たちに任せた”と言っている。つまり、イスラム国やアル・カーイダは“テロの学校”のようなもので、世界各地の若者たちが単に軍事教練目的でイスラム過激派組織に“留学”し、卒業生は母国に戻って勝手にテロを起こす時代になった。これをテロの“フランチャイズ化”と呼ぶ人もいる」

 2月にコペンハーゲンで起きた連続銃撃テロの犯人は、フェイスブックでイスラム国指導者に「良きことも悪しきことも完全に従順に忠誠を誓う」と書き込んでいたとされる。だが、デンマーク当局は「男とテロ組織の接点が見つかっていない」としている。

 だとすれば、犯人は、組織と直接のつながりがないまま過激思想に感化されたことになる。これはフランチャイズどころか、超フランチャイズだ。捜査当局が、怪しい人物をマークして事前にテロを防ぐなど、極めてむずかしいことになる。

 イスラム国などに参加するため渡航した若者は、90以上の国からの2万人以上とされる。このうち少なくとも3400人が欧米諸国の出身者で、アメリカ人も150人以上がふくまれている。空爆などですでに死亡したのは5~10%で、10~30%が帰国したと推定されている。軍事教練を受け祖国に帰ったテロリストの数は1000人単位になるわけだ。

 フランスでは、テロ事件後、370万人もの市民が「表現の自由」と「寛容」をスローガンにデモした。彼らの言う寛容は、宗教に対する揶揄や冷評はそれとは別枠で、イスラムに限らず宗教に対する言説、表現は制約してはならないとする。だが、それはキリスト教徒である白人の身勝手、傲慢ではないと言えるのか。

 彼らはテロを非難するが、フランス革命はテロリズムから生まれたという史実を忘れている。移民差別がテロの背景にあり、その対応に苦しむフランス首相は「フランスにはアパルトヘイト現象がある」と公言した。

 そのアパルトヘイトを克服し南アフリカの英雄となったマンデラ氏は、もともとテロリストとして国家反逆罪で終身刑になったことがある。いまイスラム国に対抗すべくアメリカ軍が訓練をしているクルド人も、つい最近までテロリストとされていた。テロの定義など、時代とところが変わればどうにでも変わる。

 長野の殺人犯は、妻子がありながら女の愛人を持ち、しかも男児にホモ行為をしたあと殺したとんでもないやつだった。でも、テロリストではなかった。

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