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よく言うよ、中露首脳

 今回は、ちょっとお堅い話でいく。

 「ナチズムと、日本の軍国主義と戦った国からの式典参加者に特別に感謝する。中国はアジアの主戦場だった」。ロシアのプーチン大統領は、2015年5月9日、第2次世界大戦でのナチス・ドイツに対する勝利から70年を記念するモスクワでの軍事パレードで、こう演説した。

 主賓格として招待した中国の習近平国家主席をとくに持ち上げるための発言であることは明らかだった。その前日、プーチンと習近平はクレムリンで会談し、「歴史の改ざん」に反対する立場で一致した。これは、今夏に戦後70年の談話を出す安倍首相をけん制したものだ。その後、プーチンは「われわれはナチズムと軍国主義を復権させようとするあらゆる試みに反対する」との声明を読み上げた。習は「歴史の歪曲に反対する」と述べた。

 では、両首脳が語ったことは歴史の真実に沿ったものだろうか。とんでもない。歴史の歪曲をしているのは、中露のほうなのだ。

 中国が日中戦争でアジアの主戦場だったことは事実だが、問題は誰と誰がどう戦ったかということだ。

 まず、日中戦争の発端となった盧溝橋事件はどっちが先に手を出したかという議論では、「蒋介石の国民党軍のなかに潜んでいた共産分子が日本軍を挑発した」という説が有力になっている。歴史的いきさつから満州に日本の関東軍が駐屯していたのだが、戦争を望んでいたのはむしろ中国側だった、との研究成果を中国人研究者・林思雲(リン・スーユン)氏は明らかにしている(『日中戦争の「不都合な真実」 戦争を望んだ中国 望まなかった日本』)。林は中国・南京市に生まれ九州大学で工学博士号を取得したひとだ。

 中国共産党は、「日本軍を撃退したのが党の軍隊だった」とプロパガンダをくり返し、「反日」「抗日」を党独裁による統治の正当性、正統性の根拠としてきた。だが、じっさいには、日本軍が正面から戦ったのは蒋介石が率いた国民党軍であり、毛沢東の軍は正面衝突を避けるゲリラ戦しかしなかった。そして、日本降伏後の1946年から再開された国民党との内戦に勝利し、1949年には中国大陸に中華人民共和国を樹立していまに至る。したがって、習近平や中国共産党の主張は歴史的根拠がなく、プロパガンダにすぎない。そのプロパガンダに合わせ、例の「愛国教育」という名の反日教育をつづけている。

 では、なぜ、中国人は平気で嘘をつくのだろうか。林思雲は、こう説明している。「中国人が虚言を弄するのは、多くの場合は決して自分のためではなく、家族のためであったり、場合によっては、国家のための『愛国虚言』なのである」「中国では、孔子や朱子の学説は宗教として崇拝された。それゆえ中国では『儒学』ではなく『儒教』と呼ばれた」「儒教思想の核心には日本でもよく知られている『忠、孝、礼、仁』という徳目の他に、もう一つ重要な徳目がある。それが『避諱(ひき)』である」。「避諱」は日本語の「忌避」と同義語で、「隠す」という意味合いが強く、「他人の芳しくないことを隠すこと」だという。

 嘘をつくことをよしとする文化の国を、われわれは相手にしなければならないのだから、大変だ。ふぅーっ。

 プーチンは、クリミア半島を編入してウクライナや欧米諸国の経済制裁にあうと、「西側こそファシストだ」と見当ちがいの発言をくり返した。世界の主要国では、敗戦国の日本とドイツをのぞき、戦勝記念日に軍事パレードをすることは珍しくない。だが、今回、ロシアは複数の核弾頭を搭載できる最新の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「ヤルス」を行進させた。つい先月、プーチンは「ロシアは偉大な核大国だ。われわれを敵視しないほうがいい」と欧米を恫喝した。これこそファシスト流の威嚇外交そのものではないか。

 プーチンは、戦勝70年にあわせ愛国キャンペーンを展開してきた。国営テレビは、連日、戦争関連の映画や番組を流し、国民に戦勝を祝い愛国心を表すよう呼びかけてきた。それは、「邪悪なナチス・ドイツを打ち破った偉大なソ連軍」という神話をなぞっているにすぎない。旧ソ連とドイツとのあいだにあるポーランドを、スターリンとヒトラーが半分ずつ分けることで手を打ったという現代史の事実はすっかり忘れたふりをしている。

 プーチンや習の発言こそ歴史を歪曲したものだ。まったく、よく言うよ。

 なぜプーチンはいま、国民の愛国心を鼓舞するのだろうか。月刊PISCの分析によると、ロシアは過去20年間に3度の経済危機に見舞われ、いま、4度目の危機に遭遇している。原油の輸出が収入の柱だったが、世界的な原油安と欧米の経済制裁で締め上げられ、経済不振におちいっている。

 もうひとつ、ロシアは東西冷戦での敗北やソ連崩壊という深い傷を負っており、ナチス・ドイツに対する勝利を国の基盤にすえるしかない、という事情がある。

 中露ともに「愛国」は、国民の不満を封じる常套手段なのだ。中国は、9月3日の「中国抗日戦争・反ファシスト戦争勝利記念日」にプーチンを招待する。これでは、まるで冷戦の再現になった観がある。戦後60年には、50か国の首脳がモスクワに集まった。今回は20か国だけで、ロシアが国際社会から孤立しつつあるのは、まちがいない。

 日本のメディアは、中露のでたらめ発言に一つひとつ史実のミニ解説をつけるべきだ。

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