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GHQマインド・コントロールと集団ヒステリー

 俳優のつるの剛士さん(40)が安全保障関連法案についてツイートした。「『反対反対』ばかりで『賛成』の意見や声も聞きたいなぁって報道やニュース観ていていつも思う。賛成派だって反対派だって平和への想い、戦争反対の想いは同じ」。すると、法案反対派から「反対以外の情報が欲しいということは賛成したいという意味なんですよ」などと猛バッシングにさらされているという。J-CASTニュースが2015年7月17日に伝えた。

 安保法案が衆議院を通過した前後から、いま日本では、戦後何回目かの集団ヒステリーがみられる。1960年と70年の日米安保条約改定、1992年のPKO協力法採択のときにもそうだった。

 集団ヒステリーはどこの国でも起こりうる。日本の特徴は「戦争の過去」がらみにかぎられることだ。なぜ、こうした現象が起きるのか、現代史をふり返ってみる。

 左翼の学者やメディアは「大戦は軍部の暴走によるものだ」とする。しかし、メディア史研究者らによれば、日本放送協会(NHK)や毎日新聞、朝日新聞といった当時の有力メディアが中心となって、国民を軍国主義へと煽りに煽ったのが「先」だった。

 1945年の敗戦後、マッカーサー率いるGHQが日本を占領し間接統治した。東京裁判では、A級戦犯だけでなく日本という国そのものが戦犯国として国際社会から糾弾された。

 朝日新聞をはじめ多くのメディアは、<右から左へ転向>し自称・平和主義者になって、戦争の過去を糾弾する側に回った。戦時中はほぼすべての日本人が軍国主義者だったが、知識人や一般国民の多くも、自らの過去については口をぬぐい、メディアにつづいて左傾化した。つまり、自己保身であり自己欺瞞だった。

 日本人が自発的に転向したようにみえるものの、じつはGHQの綿密な計画が裏にあった。それは”War Guilt Information Program”(WGIP、戦争罪情報計画)という。計画文書を日本人で最初に入手した評論家の江藤淳は、そのタイトルを「戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画」と大胆に意訳している。

 GHQの戦略は巧妙で、まず敗戦の年末、日本のすべての新聞に『太平洋戦争史』という大型連載を命じ、さらに学校教育の現場でも連載の内容を徹底させた。連載では軍国主義者と国民が区別して述べられ、メディアについてはまったく触れられていない。GHQは、占領統治を成功させるため、日本の指導者や一部の軍人だけを軍国主義者と呼びスケープゴートにした。一般国民は軍国主義の「被害者」のように語られた。それは国民とメディアの自己保身にとっては、この上なく好都合だった。

 GHQは、日本の非軍事化と民主化を占領目的としていた。GHQには左翼勢力がいて、日教組の設立にも水面下でかかわり、いわゆる平和教育を徹底させていまにいたる。2大敗戦国のもうひとつであるドイツにさえ、平和教育という言葉も概念もない。日本の平和教育では「戦争は絶対悪」と教えられるが、そういう考え方は世界では極めてまれだ。

 戦争のない日々を願うのは世界共通でも、人類の歴史は戦争の歴史でもあり、戦争を仕掛けられる可能性はいつでもある。だから、「立ち上がるべきときには、武器を手に立ち上がらなければならない」と教えるのが一般的だ。永世中立国スイスがその典型だ。

 日本は列島を海に囲まれているため、何となく外敵はやって来ないという心理的な錯覚が生まれやすい。ぼく自身、海外に住み取材をしているとき「国際社会は弱肉強食のサバンナだな」と痛感したが、日本に帰って何年か経つと“平和ぼけ”しそうになる。

 日本国憲法もGHQが草案を書いて強引に制定させたもので、その9条にある戦争放棄と戦力不保持の規定が、“平和ぼけ”に拍車をかけた。

 連載『太平洋戦争史』、平和教育、憲法などは、GHQが極めて意図的に行った日本人に対するマインド・コントロールの手段だった。そうしたマインド・コントロールの“成果”が歪んだ形で表面化するのが、日本の集団ヒステリーだ。その原因は、軍事・戦争アレルギーにつきる。

 かつて戦争を煽った朝日新聞など左翼転向メディアが、安保法案にヒステリックに反対するのは、偶然ではない。自己保身と自己欺瞞が心理の根底にある。

 今回の安保法案審議で、安倍首相は国民のアレルギー反応を怖れ、自衛隊員のリスク増を率直に認めることを避けた。民主党の岡田代表も、東・南シナ海情勢への見解を誤魔化して明言しなかった。いずれも、国民に対し不誠実だ。

 安保法案を国会で審議する際、本来ならば、中国や北朝鮮などわが国をとりまく安保環境がどれだけ悪化しているかで共通認識を固め、そのうえで、政府与党だけでなく野党各党も対案を提示して論戦すべきところだ。

 しかし、現実には、合憲か違憲かなどという空理空論に時間を費やし、「ではどうやって日本の安全を守ればいいのか」という本質的な議論はついに行われない。もともと9条は論ずるに値しないもので、法案が違憲と言うならまず憲法改正を主張すべきだ。

 いま、日本人は、GHQによるマインド・コントロールを歴史的背景として、メディアに煽られ、冷静な判断ができない心理状況に陥っている。しかし、時間が経てば「あのとき、安保法制が出来ていて本当に良かった」と思い知る日が、必ず来るだろう。日米安保条約のない日本の平和はありえず、自衛隊のPKO参加にもう誰も反対しないように。

 【詳しくは、アマゾン電子書籍Kindle版『朝日追撃』(木佐芳男著、2015年5月発売)で。朝日問題を中心に戦後日本の病理を心理学、精神分析などによって分析した。その際、ドイツをはじめとするヨーロッパ取材で手にした知識を“メス”として振るった】

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