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「出雲鹿」は地域ブランドとなるか

 出雲へUターンして満2年を超えた。したがって、ブログも出雲発で2年になる。毎週木曜日、原稿用紙にしてちょうど6枚分のエッセイを書くのは、正直、きついこともある。それでも、継続は力なりで、「読んでますよぉ。これからも、どんどん出雲のPRをしてください」と言われたこともある。出雲人は一般にアピールが苦手だ。

 そういう読者のひとりから、メールが届いた。「出雲鹿グルメフェア」を松江、出雲市などの料理店で2015年10月15日から開くので、ぜひ、ブログで全国発信して欲しいというのだ。島根県の美味しい食材を発掘している料理店主らのグループ「しまね地産品発掘協議会」が主催する。

 メールには主な協賛店のリストがあり、そのうち、まだ行ったことのない中華料理店「出雲翠苑」へ出かけた。電話で予約をするとき、新聞に載っていた「出雲鹿の甘酢唐辛子炒め」を出してくれるよう頼んだ。

 カーナビに店の電話番号を入力してから出かけたので、道に迷うことはなかったが、走ったことのない方面だった。市役所を起点にすると北西の街外れになるだろうか。

 店はどちらかと言えば家庭的な雰囲気で、こぢんまりとしている。本日のお勧めメニューをみていたら、外食をするときはいつも運転手役のかみさんが、「押し出し豆腐と香菜(コリアンダー)のサラダ¥400っていうのがあるわよ」と指を差す。

 香菜、つまりタイ語で言うパクチー狂のわが夫婦にとっては、「出雲にもパクチーを食べられる店があったのか!」と感動ものだ。スターターは別のものを考えていたが、このサラダをはずすわけにはいかない。それと、海老入り蒸し春巻き3本¥450を前菜にすることにした。メインは、北山産鹿肉の甘酢唐辛子炒め¥1200にした。それと紹興酒やお茶を頼んだ。

 若い女性店員が運んできた、押し出し豆腐と香菜のサラダをみて、一瞬、ケーキのモンブランかと思った。固めの豆腐をところてんのように押し出してヌードル状にし、それに塩ベースで軽く味をつけたものにパクチーが乗っている。やや薄味だが、押し出し豆腐の食感、パクチー独特の臭味ともなかなかいける。

 店員さんが紹興酒を持ってきたとき「この香菜はどうやって手に入れてるんですか?」と思わず聞いた。「ちょっとシェフに聞いてきます」と言って教えてくれたところによると、今岡さんというかたが個人で栽培しているのを買っているという。出雲の農家がパクチーを作っているとは意外だし、初耳だった。

 海老入り蒸し春巻きは、よくシンガポールの飲茶(やむちゃ)店で食べたのを思い出す味だった。かみさんも、すごく気に入ったようすだ。

 そして、北山産鹿肉の甘酢唐辛子炒めが出てきた。店員さんは「この大きな唐辛子も食べられますよ」と言った。それならとまず食べてみると、四川の唐辛子で、油でさっと揚げてあって香ばしい。激辛の四川料理にある大きい唐辛子をみてビビる日本人がいるが、風味を出すために使われるもので、そう辛くはない。

 さて、注目の鹿肉を頬ばると、上手に下味がつけてあり、実に美味しくしかも柔らかい。鹿肉を食べたのは南信州・伊那と、東京・本郷の東大赤門近くにあるジビエ料理店の2回だけだが、いずれも、わざわざ食べるほどのものでもない、と思った記憶がある。この北山産はいける。ニンニクの芽、シメジ、ピーナツとからめてあり、酢豚とおなじように作った「酢鹿」だった。これなら、じゅうぶん看板料理になりそうだ。

 店員さんに、その部位を聞いてきてもらうと、モモ肉を使っているという。出雲のある友人は「猪の肉をもらったら家で食べて、鹿肉をもらったらたらい回しにする」と言っていた。それだけ鹿は旨くないということなのだろうが、一流の料理人にかかれば、これほどの一品になる。

 出雲で北山は、島根半島の西端あたりの山のことを言う。読売新聞によると、1980年代からニホンジカの農林被害が深刻になった。木の芽を食べる。県全体の約85%に当たる2962頭が北山にいるとみられ、昨年の被害も県総額の86%に上った。県は2000年度に北山山地で捕獲に乗り出し頭数はかなり減ってきた。捕獲したシカは、これまで土中に埋めるなどしていたが、それを再活用する機運がやっと高まってきたわけだ。

 シカは出雲市猟友会などが捕獲し、佐田町の狩猟者らで作る山渓会が処理するという。シカ狩りは大変な仕事だが、報奨金が出ることもあって何とか頑張っている人たちがいるのだそうだ。

 出雲翠苑では、かみさんのリクエストで広島産牡蠣と鱈のトウチソース炒め¥800やサンラー麺¥800も頼んだ。デザートの杏仁豆腐は、過去最高レベルの出来映えに思えた。

 飲食代は税込み¥5800と安い。会計のとき、シェフの吾郷克己さん(61)と話をした。どこで料理修業をしたか聞くと、地元の店で働き、20年ほど前に独立したのだという。それでこの味とは。「出雲にUターンして来たんですが、こっちでこれほど本格的な中華を食べられるとは、思っていませんでした」と言うと「そりゃ、うれしいねぇ」

 ただ、メニューにも店内の掲示にも、肝心の「出雲鹿」という言葉は使われていない。その辺り、PR精神がイマイチの出雲たるゆえんか。ブランド名は統一しよう。

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