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磐座とイワクラ

 イワクラサミットなるものが、出雲市大社町で開かれた。午後の4時間のあいだに、講演3つとシンポジウムひとつという、ちょっときつい日程だったが、ネットで予約して参加した。

 このサミットは今回で12回目だという。全国の巨石研究者や愛好者で作るイワクラ学会が開いた。会場には約150人が集まっていた。磐座というのは、一般に古い神社の奥社や神と崇められる山の頂上付近などにある巨石のことだ。ほぼ全国各地にある。

 出雲大社の須佐之男命を祀る社の背後にも磐座があるそうだが、禁足地のためみることはできない。9月に訪れた奈良県桜井市の三輪山は、山そのものがご神体で、麓にある大神神社には、ご神体を祀る本殿はなく拝殿だけがある。この三輪山一帯も磐座の宝庫で、広大な境内の一角にある少名彦名を祀るその名も磐座神社というのがあった。そこの磐座は直径1㍍ほどの小さな岩で、磐座のイメージを覆すものだった。少名彦名は大国主命の国造りを助けた小びとの神さまとされ、だから磐座も小さいのかもしれない。

 ぼくは、磐座を訪ねて東北、関東の神社のいくつかを回ったことがある。なかでも迫力があるのは、群馬県高崎市にある榛名神社だ。高さ50㍍ほどの柱状の圧倒される巨岩がご神体で「御姿岩」と呼ばれる。この神社には強力な願望実現のパワーがあるとされ、休日ともなると多くの参拝客でにぎわう。

 天照大神を頂点とする大和族の神々のご神体は鏡が一般的だが、それより古い神道はアニミズムで巨岩や山、瀧などを崇拝していた。だから、磐座を崇める全国各地の神社は、ひょっとしたら出雲系ではないかと個人的に仮説をもっていた。だが、イワクラサミットでは、もっと大きく目を見開かされた。

 講演やシンポジウムはそれぞれに興味深かったが、なかでも面白かったのが、巨石ハンターを名乗る須田郡司さんの話だった。須田さんは、2年前に大社町へIターンしてきたのだという。

 講演のタイトルは「世界の石の聖地を訪ねて」というものだった。磐座と日本語で言えば神道に直結するが、世界の聖地や遺跡でも石や巨石をよく目にするという。やはりその多くは信仰の対象となっていて、須田さんは「広い意味での磐座(イワクラ)は、世界中で見ることができる」とする。

 考えてみればその通りで、世界最大のイワクラはオーストラリアのエアーズロックだ。高さ約350㍍、周囲約10㎞にもおよぶ巨大な1枚岩で、先住民アボリジニーは「ウルル」と呼んでいるのだという。ぼくはまだ現地に行ったことがないから知らなかったが、岩は赤色の砂岩でできていて陽光の角度によってさまざまな色に変化するそうだ。それが荒野にどーんとそびえているのだから、さぞかし壮観だろう。神道の磐座信仰とおなじで、アボリジニーはごく自然に、エアーズロックに神を感じたのだろう。

 それだけの存在だから世界中のひとを引きつけており、観光登山も行われているという。だが、先住民は信仰の対象としており、観光で登るのをためらうひともいるそうだ。

 スリランカにはぼくも3度ほど行ったことがあるが、須田さんの話で初めて知ったのはシーギリアロックという巨岩だった。ライオンの岩という意味だという。マグマが硬化して出来た楕円柱で、岩そのものだけで高さは約195㍍あり、それが山の上にそびえ標高は約370㍍あるそうだ。これもさぞかし壮観で、古代のひとは神とみたのだろう。

 アメリカにも、先住民にとって聖なる岩として崇められている、高さ約244㍍のスパイダーズロックがあるそうだ。ナヴァホ族は織物を大切な生業のひとつとしており、「おばあさん蜘蛛が人びとに織物を教えてくれた」と信じているという。だから、岩をスパイダーと呼ぶのだという。

 自然石ではなく加工された岩もある。なかでも有名なのが、チリ・イースター島のモアイ像だ。多くのモアイはなぜか海に背を向けて、島の高台に建てられている。建造中に放置されたものもふくめ約1000体もあると初めて知った。先日のあるテレビ番組では、モアイは頭部だけではなく、最近、地中に胴体も見つかったそうだ。何らかの信仰によるものなのだろうが、誰が何のために作ったのかはいまだに謎だ。

 須田さんは「石の聖地は性地でもある」と語った。夫婦岩として日本でもっともよく知られているのが伊勢二見ヶ浦の夫婦岩だ。ぼくもかねてからあれは磐座だろうと思っていた。伊勢神宮に天照大神が祀られるよりずっと以前から、信仰の対象になっていたのではないか。

 この夫婦岩は、日の大神である天照大神と興玉神石を拝むための「天然の鳥居」でもあるそうだ。興玉神石は沖合約700㍍の海中に鎮まっていると言われているという。毎年、夏至の前後1週間は岩の中央から太陽が昇り、天気が良ければ、その背に霊峰富士を仰ぐことができる。

 夫婦岩は各地にあるが、それとおなじように親しまれているのが陰陽石だ。宮崎県小林市の陰陽石は、まさに男女の性器の形をしており、古くから信仰されていたという。おそらく、人びとは子孫繁栄を祈ったのだろう。

 磐座ファンは、全国的に増えているそうだ。次のサミットはどこで開かれるんだろう。

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