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若者たちが恋愛を避けている

 もうだいぶん前のことだが、いわゆる「萌え」の市場が1兆円を超えるようになるだろうという予測に、まさかと思ったことがある。萌えは、アニメやアニメ風のゲームなどに熱中するオタクに限られた心理メカニズムだと考えていた。しかし、AKB48をはじめとするアイドルの全盛時代がつづき、それも萌えのひとつとすれば、いまでは1兆円をはるかに超える市場になっているだろう。

 それも文化だが、萌えの一般化は社会にとってある問題を提起しているとも言える。若者が実体験としての恋愛に関心を薄めている現実だ。自分や周囲の友だちなどの経験から言っても、恋心は人間ならだれでも抱く感情だと思っていたのだが、どうやらそれが当てはまらない時代がとっくに来ているらしい。

 内閣府が公表した「結婚・家族形成に関する意識調査」の結果によると、20代から30代の未婚男女の37.6%が「恋人は欲しくない」と回答した。男女別でみると、「欲しくない」と回答した男性は36.2%、女性は39.1%だった。

 幼稚園や小学校のころひそかに異性を好きになる初恋をし、思春期には実際に異性と交際する幸運な者がいて、まだ恋人のいない者はそれをうらやましく思う。それが動物の一種としての人間の自然なあり方だというのは、過去の話らしい。

 それにしても、20代から30代の未婚男女の3人にひとり以上が「恋人は欲しくない」としている事実は、日本社会がわずか30~40年のあいだに激変したことを示しているのではないか。

 恋人が欲しくない理由として挙げられたのは、「恋愛が面倒」(46.2%)、「自分の趣味に力を入れたい」(45.1%)、「仕事や勉強に力を入れたい」(32.9%)、「恋愛に興味がない(28%)だった。

 自分の趣味と恋愛は並び立たないと、若者は考えているのか。興味がないというのは、やはり草食化して性欲もほとんどないためなのだろうか。理由のなかで一番多いのが面倒だからというのは、若者も人間関係で疲れた経験があるからなのだろうか。

 日本家族計画協会がまとめたアンケートによると、セックスに関心がないか、嫌悪していると答えた男性は、16〜19代で34.0%に上った。全体では、18.3%と調査における過去最高になった。性交経験率が5割を超える年齢も、29歳と高かった。

 日本では、いわゆる草食系男子が増えていることと関係があるのかどうか。草食系化の問題で言えば、たとえば韓国ではそういう傾向はまったくないとされる。韓国には青年男子が乗り越えなければならない徴兵制があるからではないか、という説を聞いたことがある。だが、日本とおなじく徴兵制がない国でも、男子が草食化しているケースを聞いたことがない。ドイツでは5年前に徴兵制を事実上、廃止したが、その後草食化の傾向がみられるという報告はない。

 日本には少子化ジャーナリストを名乗るひとがいるそうで、その白河桃子さんが読売新聞にこう語っている。

 <日本は世界最大の「萌え」生産国で、アイドルやアニメ、ゲームなど、恋愛の代わりに「ときめき」を与えてくれるものがいくらでもある。恋愛と違い、相手から傷つけられることもない。複雑に人とつながるSNS時代の、人間関係の面倒くささも問題だ。関係を乱さないよう職場恋愛はしない。趣味や地域貢献活動などの集まりは「恋愛する場ではない」という雰囲気だ>

 白河さんは、電通総研の2010年の調査で23~49歳の男性の6割が「恋愛では受け身」と答えたデータもあげている。そう言えば、婚活に熱心なのは女性のほうらしく、縁結びで知られるわが出雲へも、若い女性がたくさん結婚祈願に訪れてにぎわっている。若い男性が婚活で出雲へ来たケースは聞いたことがない。

 和光大学准教授の高坂康雅さんは、こう語っている。<アニメや漫画、インターネットサイトなどを通じて、大量の恋愛情報に接するうち、未経験なのに経験した気になってしまう。幸せな恋物語だけでなく、失恋やトラブルに発展するケースなどマイナスの情報も多く、恋愛に憧れを抱けない。むしろ、否定的な印象を持つようになる>

 これに対し、早稲田大学教授で恋愛を科学的に探求する「恋愛学」講座を開いている森川友義さんは、今時の若者をちょっと突き放してみている。<若者はよく「恋愛は面倒くさい」「友達付き合いのほうが楽しい」と主張する。しかし、それは自己正当化にすぎない。恋愛の楽しさを認めてしまうと、恋愛ができていない自分がみじめになってしまうから、言い訳を並べるのだろう>

 恋愛学講座では、男女が引かれ合うメカニズムやデート戦術などを学生に解説しているそうだ。子どものころから、塾通いをしている若者たちには、大学で手取り足取り恋愛のノウハウまで教えなければならない時代なのか。よけいなお世話という気もするが。

 考えてみれば、恋愛をして自分に合う相手をみつけて結婚する、というのは歴史の浅い戦後の文化にすぎない。ぼくらの親たちの世代は、見合い結婚が一般的だった。1950年代でも結婚の半分はお見合いだったという。

 少子化を解消するため、“世話焼きおばさん”の復活を求めるのが手っ取り早いだろうか。

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コメント

いい気なもんだな。
こんな情けない文章書いて金がもらえるのか。

投稿: | 2017年1月 3日 (火) 22時37分

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