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牛骨の牛骨による牛骨のためのラーメン

 牛骨ラーメンを食べながらこう考えた。
 う、うまい!

 でも、インドのヒンドゥー教徒は食べられなくて可哀想だ。インドネシアのヒンドゥー教徒もおなじだろうが。

 ヒンドゥー教では、牛は神さまの使いとされ、それがもたらしてくれる牛乳は大いに飲み、バターでご神体をつくったりする。でも、牛肉を食べるのはもってのほかで、牛皮の靴をはいていてヒンドゥー教原理主義者に襲われたひともいるくらいだ。

 逆に、イスラム教徒は豚を食べない。ハラールという言葉を知っているひともいるだろう。アラビア語で「許された」の意味で、イスラム教の教義に従って必要な作法どおりに調製された「ハラール肉」などのことをいう。

 おなじ肉でも、きちんと宗教ルールにのっとって処理されたものしか、彼らは口にしてはいけないのだ。いま日本にも多くのイスラム教徒がやって来ていて、東京オリンピック時にはピークになり、ハラール食品が不足するのではないかとニュースになっている。

 さて、牛骨ラーメンは鳥取の名物だ。先日、米子市へ行く用があり、事前にネットでうまそうな店を調べてから出かけた。

 米子鬼太郎空港のある弓ヶ浜半島を南下すると、あったあった、お目当ての店がポツンとあった。商店街にあると勝手に思い込んでいたら、新興開発地に一軒家として建っていた。

 店内はざっと30席あり、明るいウッディな造りだ。正午までには少し時間があったが、作業服を着たお客さん数人が食べていた。かみさんと相談して、牛骨ラーメン650円と初体験の牛骨坦々面700円を注文した。

 壁には「ランチは半ライスをサービス」とある。坦々面には白飯が合うな、とは思いながらウエスト回りを気にしてやめておいた。

 若いウェートレスさんが、運んで来てくれた。まず坦々面のスープを飲むと、赤唐辛子の辛さが牛骨の出汁にちょっと勝ちすぎている。ラーメンのほうは、繊細な牛骨の出汁を消さないようあっさりした塩味で、こっちのほうが断然いける。

 それにしても、豚骨ラーメンは全国に普及しているのに、どうして牛骨ラーメンはこうも珍しいのだろう。

 店のレジ横に『鳥取牛骨ラーメン大全』という冊子があったので、一部もらってあとでじっくり読んだ。

 鳥取牛骨ラーメン応援団ならぬ応麺団なるものが結成されているそうで、専門店、焼き肉店、食堂など県内66店の牛骨ラーメンがカラー写真つきで紹介されている。

 ぼくたちが訪れた店は「牛骨の旨味を徹底追求すべく、スープは牛素材100%」がうたい文句となっていた。たしかに化学調味料などを入れていないのは明らかで、スープを全部飲み干すのが礼儀かと思わせるものがあった。

 冊子の巻末には、応麺団顧問を名乗る植田英樹さんが、牛骨ラーメンの来歴をつづっている。

 ルーツは1900年代初頭の中国西部・蘭州にあるという。清の光緒年間(1875~1908年)に、「蘭州牛肉拉麺」なる清湯のスープ麺が考案された。その地域はイスラム教徒が多く、現地の食堂では、いまも牛骨スープに牛肉を乗せた麺が人気を博しているそうだ。

 やっぱり、イスラム教徒がからんでいた。一般に、食と宗教は深いつながりがある。乳製品の醍醐などは、もろに仏教から来ている言葉だ。

 第2次世界大戦で日本が敗れるまで、中国北東部には満州帝国があった。そこに入植していたある日本人が、かの地で覚えた牛肉拉麺の味を祖国に持ち帰ったのだという。

 鳥取県での牛骨ラーメンの発祥は、したがって、昭和21年ごろとされる。つまり、今年は誕生70周年の記念すべき年にあたるわけだ。昭和23年ごろ、倉吉市の食堂「松月」でメニューとなり、そこで作り方を教わった食堂経営者たちが県中西部地区に広めた。

 この地域で広まった理由としては、子牛売買が盛んだったことがあげられている。当時、「鶏ガラはお金を出して買ったが、牛骨はほぼ只」で、しかも、10時間以上煮ても味が出つづけるというメリットがあり、よく使われるようになった。

 ご当地グルメ誕生の背景には、その地で安定的にかつ比較的安く手に入る食材があることが不可欠だと、植田さんも書いている。

 戦後間もなくの食材が手に入りにくい時代に、鳥取県中西部で牛骨ラーメンが広まったのは、いわば必然だった。

 牛骨系ラーメンは旧満州から鳥取県へ、醤油系ラーメンは上海あたりから横浜・東京へ、ちゃんぽん系は福州あたりから九州・沖縄へ伝わったと考えられている。

 神戸へ行ったとき、三宮に牛骨ラーメンの店をみつけ、鳥取から流れて来たのかなぁと思ったことがある。

 冊子によると、“牛骨の祖”とも言われる店「香味徳」は、2010年、銀座店をオープンさせたそうだ。牛骨ラーメンが全国に広まる日は来るのだろうか。

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