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3つのバトルが面白い 安倍vs.民進党、vs.財務省、vs.朝日

 安倍晋三首相が、消費増税を2年半先送りした。「消費の落ち込みを防ぎ、デフレ脱却を確実にする狙い」だと説明した。

 これについて、ロイター通信は批判した。<増税見送りでも、消費の弱さのベースとなっている課題は解決されないうえ、増税を見送れば、社会保障の負担拡大など消費者が抱える将来不安の解消も遠のき、購買意欲がさらに委縮する悪循環に陥る可能性すらある>

 さて、バトルだ。首相は、伊勢志摩サミットで「リーマン級の世界的危機が再来するリスクがある」と言った。その際に示した資料を民進党は問題視し、「国際機関でもそうした予想はなく消費増税の口実だ」と批判している。海外メディアもおなじような見方をし、安倍政権の経済・安保政策を基本的に支持している読売新聞をふくめ、日本のほとんどのメディアも批判した。

 だが、東大の数学科を出て旧大蔵省に入った異色の経歴をもつ数量分析家で経済学者の高橋洋一氏は、首相を擁護する。

 <中国経済については、隣国日本にとってリーマン・ショック級になっても不思議でないほど悪化している><中国を名指ししなくても、ロシア、ブラジルなどのBRICS諸国の経済成長のリスクを考えるのは、経済分析としてはイロハである。安倍首相はそういったことをサミットの場で率直に話したのだろう。リスクを認識するのは、現状分析で欠かせない>

 民進党は「その資料を誰が作ったのかが分からない、官僚が作っていないから問題だ」とした。だが、高橋氏はそれを「幼稚な話だ。将来のリスクという不確かな話は官僚の苦手な分野なので、政治的な直感を活用して資料をつくってもいいだろう」とする。元大蔵(財務)官僚が言うだけに説得力がある。

 財務官僚は、頭のいいひとがそろっているというイメージがあるだろう。でも、将来予測や大局的な分析は苦手だというのは、ぼくの知り合いの財務官僚にもあてはまる。そういう訓練を職業として受けていないのだからしかたがない。

 <前提として、民進党も消費増税を見送る意向は一致している。だから、彼らが何を批判したいのかさっぱりわからない。民進党はアベノミクスの失敗というが、民進党が批判する安倍政権の金融緩和は、雇用の改善という結果を出している><民主党政権では就業者数は30万程度減少したが、安倍政権になってから100万人以上増加している>

 こう指摘する高橋氏は、政治家や財務官僚とは距離を置いてデータの数字をもとに分析するので、ぼくは信頼している。財務にかぎらず、集団的自衛権の違憲論で騒ぎになったときも、冷静に論じてさすがだった。

 <GDPの低迷は、民主党時代に成立した消費増税法のためである(3党合意があったので、自公の責任も免れないが)。今回の消費増税の先送りは、……やる場合とやらない場合のメリット・デメリットを合理的に判断した結果である>

 さて、もうひとつのバトルだ。消費税を5%から8%にあげる際、財務省は「消費増税の影響は軽微」と説明し、増税後実際に悪影響が出ても「せいぜい3、4か月」と言っていた。しかし、高橋氏は「トンでもなく間違った説明をしていた」と切り捨てる。

 経済には「構造失業率」という言葉がある。雇用のミスマッチなどで、それ以下に下げられない「失業率の底」を意味する。日銀は構造失業率を3%前半とみているが、高橋氏によればそれもまちがいで、<きちんと推計すると、構造失業率は2.7%程度。だから、まだ賃上げは本格化せず、物価も上がりにくいというわけだ>

 財務省は「日本の借金が1000兆円ある」と言い、日本の常識みたいになっている。それは「財務省のプロパガンダ」だと高橋氏は断言する。<財政状況を見るには、政府だけではなく、中央銀行を含む政府の関連会社を含めた連結ベースのバランスシートを見なければならない>

 実質的な債務残高は170兆円程度にすぎない、と彼はかねてから言いつづけている。これが最大のキーポイントだ。<残念ながら、マスコミは財務省のプロパガンダによって、「日本の財政は悪化しているので、消費増税は避けられない」と思いこんでいる>

 まさか、天下の財務省がそんな大嘘をつくはずがない、とみんな思っている。なぜ嘘をつくのか、その理由は諸説あるが、財務省の利権にかかわるとの指摘もある。増税しないと少子化や高齢化対策の財源がなくなるというのは、財務省が創り出した「神話」かもしれない。

 さすがの安倍首相も、面と向かって財務省を嘘つき呼ばわりはできない。だが、消費者が抱える将来不安は、根拠があいまいで、たぶんに心理学的なものと言える。

 最後のバトルがvs.朝日新聞だ。「首相はまた逃げるのか」などと社説で批判した。しかも、3日連続、ヒステリックに批判の社説を掲げた。消費が冷え込み法人税などがおちこめば財源確保どころではなくなり、本末転倒になる恐れに朝日は目をつむった。いつものことながら、朝日は現実が直視できない。

 増税を先送りしてどうなるか。首相と財務省、朝日、どっちの言い分が正しかったかは、東京オリンピックのころに答えが出るはずだ。

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